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ニッポン TPP; 通商舵取り・メガFTA

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(一財)アジア・パシフィック・イニシアチブ(API) 編『検証 安倍政権』2022/1/20刊 文春新書を借りてきました。

新書だけどかなり分厚い。『TPP』関係のところを中心に拾い読みしてみます。 

そのうちの関心事は、✳️ 第5章 TPP・通商(寺田 貴・同志社大学法学部政治学科教授 著述)TPP決断、体制づくり、なぜ推進したか、RCEPと日欧EPAの役割、4項目の論稿をこれから読みます。

(新書・文庫)『検証 安倍政権』アジア・パシフィック・イニシアティブ著: 日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO80463960V20C22A2MY6000/

『検証 安倍政権』の書評が日本経済新聞に掲載 – Asia Pacific Initiative 一般財団法人アジア・パシフィック・イニシアティブ
https://apinitiative.org/2022/02/26/33717/

ニッポンTPPの現実。通商舵取りとメガFTA

TPPについて実際の史実が語られる。通商の舵取りとメガFTAについて要旨は以下の通り。

  • 安倍政権と安倍首相の「人事」と対策本部などの組織設計。
  • 政治力(特にトランプが大統領就任前にトランプタワーに出向いて行った一部からは鋭い批判のある90分間の直接会談)の効果として、トランプが日本主導に反対しないことを安倍首相が獲得したこと。
  • 牛肉では日豪EPAでの関税や結果を引き合いにして米国を強く牽制。米国交渉当事者を激怒させたしたたかな手法。
  • 豪州首相との個人レベルの関係で支持を得て主導的に振る舞えた政治力。
  • 各国が日本は米国の言いなりではない、と認識してその主導を認知したことなど。

表には報道されなかった政治的ストーリーが具体的な効果と共に整理して大学の学究レベルで解説され、非常に興味深い。

  • 当時の農水族の取り込みと大臣ポストの采配。反対勢力JAへの対応(抑えこみや組織改革での政治指導)など。

実に多面的。そして、いかなる策を持ってその指導力と政治力を発揮したのか如実にわかり面白い。

第5章の最後から抜粋して引用する。

RCEPと対米配慮

  • 中国は習近平国家主席の下、アジアから欧州にかけて「一帯一路」構想を進めるなど、自らの経済圏設立に余念がない。
  • オバマ大統領と安倍首相は、TPPは21世紀型の経済ルール作りを広げることで、中国による経済支配を阻止する重要な戦略的手段であると考え、共にその締結に努力をしてきた。
  • 実際、TPP11の背景にある、こうした戦略的推進要因を理解する中国の専門家は、TPPは「もともとの目的の1つであるアジア太平洋地域におけるルールの策定に中国を関与させないと言うことに資する。(この目的を共有する)ベトナムシンガポールも、TPP11から中国を除こうとした」と述べている。
  • このような戦略的観点から言えば、RCEPは中国版TPPとも見ることが可能であり、実際に中国共産党系の「環球時報」はRCEPを『西太平洋での米国の覇権を終わらせる』と論じている。注44 : 日本経済新聞2020年12月22日」
  • その意味で、TPP11妥結後、1年間の交渉期間を経て19年9月に合意した日米貿易協定(TAG)は、RCEP妥結にとっても政治的に重要であった。TPP11、RCEP、日欧EPAなど、日本が各国とFTAを締結する中で、米国の望む二国間協定が進まないのは、共同生命の精神にもとることを意味していた。
  • 農産物自由化については、過去の日本のFTAの水準を上回らないことが、18年9月の日米共同声明に明記されていたため、牛・豚肉、小麦・大麦、ワインやチーズなどそのほとんどはTPPと同レベルでの合意となった。

TPPと日欧EPA交渉

  • 日曜EPAの第一回交渉は13年4月、まさしく安倍政権がTPP参加を決定した直後に開始されている。
  • 協定の範囲や目標を定めるスコーピング作業はそれより2年も前に開始されていた。その間、EUは日本の自動車輸入増加への懸念を主な理由にあまり強い関心を示してこなかった。しかし日本のTPP参加の動きに刺激を受ける形で、EUが日本に歩み寄ったのである。
  • EUはワイン、チーズなどの関税撤廃、自動車の安全基準の統一、政府調達(例えばJR各社の機材調達)に関する市場開放を要求する一方、日本はEUの鉱工業品等の交換税(自動車10%、電子機器14%)の撤廃を求めた。
  • しかし交渉開始後は、両サイドの要求があぶり出されるだけで、妥結に導く努力は見られなかった。この遅れは日本がTPP交渉を優先させたことに加え、調整機能がこの協定に存在しなかったことにも起因する。
  • TPP交渉と異なり、EUとの交渉を統括する閣僚は置かれず、外務省が取りまとめ役になって対象項目ごとに各省庁の担当者が関与する従来の体制になっていた。
  • しかしここでもトランプ政権の誕生が、そのような日を両者の思惑を一変させ、交渉が動き出す。
  • 例えば安倍政権は17年6月からは閣僚級に議論のステージを上げ、最終的に7月5日から岸田外務大臣がベルギーでの閣僚協議に臨み、さらに欧州産チーズや日本産自動車をめぐる関税撤廃について最終的な詰めの交渉を経て、第24回日EU定期首脳会議にて日曜EPA締結での大枠合意を宣言した。注48 : 日本経済新聞2017年7月6日
  • 重要なのは、TPPのために交渉の土台となる「政策大綱」を既に策定していたことだった。EUとのEPAはその内容を落とし込んだ「ほぼTPPのコピー」となった。
  • 関西品目に関して、日曜EPAがTPPと異なるのは小麦粉を含むパスタやチョコレートなどごく1部の品目だけだった
  • 多少の調整部分を追加するだけで済んだ
  • つまり日本の農産品に関する国内調整がTPPで終了したため、日曜EPAにそのまま適用することで、交渉を迅速に進めることができた。
  • ある交渉官は「欧州側もTPPがまとまるまでは日本との交渉は動かないと理解していたので、TPPがまとまったのを見て、大体そこを着地点として後は微調整をしていくと言う感じになった」と述べている。