ときおり人生ジャーナル by あきしお ⁦‪@accurasal‬⁩

ときおり人生の思いを綴る雑記帳|andy-e49er | ID-Zerv 2b trusted @Accurasal

ソーシャルメディア (Threads) by meta

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Threads
 (スレッド) by meta って、そのシステム、仕組みがよく分からない。イーロン・マスクが買い取って自分の好き勝手に変えてしまった、"いわゆるX" つまり旧twitterに、対抗するべく、facebook改め、meta と改名したマーク・ザッカーバーグが、鳴り物入りで立ち上げたものなのだが、その後のサブスクライバー数などはどうなのだろう。あまり目にしない。

 まず、Threadsは、こちらがフォローしていないのにそんな知らない人の投稿文がたくさん出てくること。そしてそれをフォローするかどうかの選択肢が出る。これ、運営側でどう選択して見せてくるアルゴリズムにしているのか?

 より具体的な疑問としては、私自身の投稿文がこのように誰かに表示され、その誰かに対してフォローする / しないを選ばせていたりするのだろうか。
 投稿されてこちらの画面に出る内容は、どれもなんだか、とてもまともでしっかりした内容。しかも割と長い文章であり、場合によると、続けて長文構成になっているものも多く見受けられる。海外の人生もの話とか、多い。中には解説めいたものや、知見の紹介も。

✳️ あと、これはイイなと思えるのは、

  • 政治や社会のリアルすぎる批判、非難、論評、主張と、それで対抗する内容が出てきて "荒れる" ことがない。そういえば一度も目にしていません。
  • 個人の思い、経験、知見が多い。
  • 海外生活や文化論的な発信も。など...。

 つまり、いわゆる旧Twitterのような感覚的な短文もの、ちょっとした感想とか、"つぶやき" ではない。反論や反応はどれも好意的なものばかり。ひねくれた内容は目にしません。写真付き投稿もたいへん多いが、至ってまともで普通。"キワモノ" はなく、モデルのような方の写真はあるけど「興味なし」でカットできる。

▶︎従って、割とサイト内は、平和。平穏無事というかいい意味での「読み物」的で、このスペースは至極まともである。運営側の意図としても、そういうことなのだろうか。

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ここまで、振り返ってみて、やはり、運営側で何か取捨選択しているか、アルゴリズムで変なものは弾いているか、そんな気がします。

Webで見つけた解説サイト🔗 Threads(スレッズ)とは?Instagram(インスタグラム)で見かけるスレッズとは何かを解説・使い方の紹介!

✳️ ところで、ソーシャルメディア、日本では (SNS) については、数年前に音声だけの『Clubhouse』が世に出て、紹介制で限定2名に限るなど、スタート時点のマーケ策が目立ち、私も友人から招待を受けて際にはそれで喜んだものだ。そのあと半年以上は割と熱中し、いくつかのルームを定期的に聴いて、また内容のチェックなどもおこなった。だが気がつくといつのまにか全く使わなくなった。

◎最近はYouTubeのコンテンツ。個人的に好きで志向する武術・武芸ものを主体に、量子理論の物理ものはよく観るけれど、あとはこちら、"はてなブログ" に書き付けることの時間が増えているように自覚する。

amazon Kindle に久しぶりに、新しいコンテンツを買って、通勤時読み始めました。尾河真希氏の為替に関する対話形式の一冊ですが、わかりやすく読みやすい。これは⭕️でした。

▲とりとめなく書いたが、以上が近況と感想。

追伸)🇫🇷フランスでのオリンピックがパリの開催セレモニー @7/26(金) 日本時間土曜未明に始まりました。柔道や🤺フェンシングなんか楽しみで、水泳も外せない。しばらくの間、スマホSNSを見ることから遠ざかりそうです。

(紹介論文) web3の到来と社会の変革

同時期にアメリカ西海岸にいた知人がキャリア転換後に出稿したIT系社会課題のレポートです

web3の到来と社会の変革|
国際社会経済研究所(IISE)
#note

web3の到来と社会の変革|国際社会経済研究所(IISE)

#IT領域 の話はいつも難解。

テクノロジーに触れる機会のない人も『#推し活』話なら馴染み深いはず

…ということで現代ITテクノロジーの空気感に触れて読むのはよいかも…の個人的推薦です。

『情熱』

(引用) 出所 : attainments_presence さん

おはようございます🫠🥤🗒️

【リーダーシップの備忘録】

情熱というのは
才能の中の才能です。

(アンソニー・ロビンズ)

keywords:
マインドフル
自己理解
エグゼクティブプレゼンス
executivepresence

エジソンの、有名な99%の努力、という話も本質的にはパッション・情熱あってこその努力の積み重ね。ですから、情熱を持つ、しかも “持ち続ける” ことは、やはり『才能の中の才能』なのでしょう。 毎日、いままでよりも忙しい中で、同じだけの勢いを保つことがいかに難しいかをいままさに今日実感しているところです。

仕事で相談や質問に答えている会話の中で、情熱は少し抑えめにする必要がある気がしています。

→話す相手のレベルとか反応度合いにより、いい意味でトークの感じ、話術のギアを変える。結構、重要で外せないテクニックだと、最近特に思います。

「国際政治」恐怖と希望 (高坂正堯)から…付録あり

まずは先に付録としての最新ニュース。別件の【速報】…米国では6時間ほど前。拾っておく

アメリカ合衆国の次期大統領選挙の民主党候補にして、現職大統領の…バイデン本人、Xで表明は6時間前。

#バイデン撤退 #Biden drop out. 👉 #カマラハリス支持

21日午後1時45分、バイデン氏は上級スタッフらに心変わりしたことを明かし、撤退を伝えたという。そして、その1分後にX上で表明した。(Reuters 記事から)

出所 : バイデン氏、撤退表明1分前に側近へ連絡 2日間で決断=関係者 | ロイター

タイム誌はたった今、
Why Joe Biden dropped out をポスト。
ti.me/3SiC6km

https://x.com/time/status/1815125029299896527?s=46
を発信。
(日本メディアでは(7/22JST) 先程NHK朝9時の5分間ニュースで "項目のみ" 掲載、説明なし)

f:id:andy-e49er:20240722093814j:image バイデン本人のポストはこちら▶︎ https://x.com/joebiden/status/1815087772216303933?s=46

✴️ まだまだこれから。投票者の心理、ケネディの去就など、変動要因は少なくはなさそうだ。以下の調査結果は少し意外だが『ほぼトラ』ということもなく面白くなりそう。🇺🇸大統領選挙はとにかく何が起こるか分からない。過去のヒラリーのケースもある….。予断は許さない。

(☝️7/24水曜JST、旧twitter 私の投稿から)

  • ハリス氏、支持率でトランプ氏を2%ポイントリード 米大統領
    By ロイター編集
    2024年7月24日午前 5:35 GMT+96時間前更新👇
https://jp.reuters.com/world/us/WNMOCBFNZFLTDCSQKOD5UNQN2U-2024-07-23/%20

この動画、なぜかスカッとするぞ(笑) ^_^ ; 👇

https://x.com/brandonkhill/status/1815571248824701317?s=46←カマラ・ハリス演説

(7/26 Reuters報道から)

✳️ いろいろ情報が出てくる。
当然、11月に向けた意図的な発信だろう。

少なくとも競争相手との差異としてのこのような “前向きな評価” が、この報道を知った人に、favorable な材料として受け入れられる可能性がある。まだ支持を明確にしていない層には有効な材料になりうる。👇記事へのリンク🔗 https://jp.reuters.com/world/security/ZMJS6RIOI5MC3EYZXW7LZXR7MY-2024-07-25/%20

私のついこの間の投稿👉大統領選びの根本と民衆心理 (U.S.A.) - ときおり人生ジャーナル by あきしお ⁦‪@accurasal‬⁩


私の関心は、"米国次期政権の世界への影響" 、そしてそのNATO との関わり、また日本への影響。(為念)  世界の平和が理想的な希望です。

アメリカ大統領には、自制も含めて世界 (そして国際政治 ) の向かう方向を決して間違わない人になって欲しい。

▼本題に戻ります。「国際政治」恐怖と希望

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🇯🇵の進む方向に、影響なしとはしない。

これから記載する国際政治の考え方と照らし、"力による現状変更の試み" への対抗など、世界の平和へのインパクトがどう出るか。国際政治には各国の思惑と内政(予算と方針)事情要素が高度複雑に絡み合う。予測不能。この後、大統領選挙の行方と、その先の推移を見守るしかないだろう…金融や為替がどう動くのか。

 

▼▼さて、本題。

(私の感想) この一冊日経新聞書評での元外交官の大学教授からの推薦だった。著者の高名さは (私がどこでどう知ったのか全く不明であるが) つとに知られており、早速手に取った。

 読み始めると内容の考察レベルがとてつもなく高い。思索の深さ。論理明晰。史実、特に欧米列強国の歩み、外交と戦争史実から分析的に整理し語られる。歴史的哲学者の思考を引いている。学ぶべき中核的思考が手に取るようにわかり、それらが頭に入る名著。

👉そこでどうしてもノートに書き写したくなり、このテキストデータになったことを明記する。

「国際政治」恐怖と希望(改版) 高坂正堯  (中公新書)    気になったところを抜き書き ; 

…なお、後段に本書の目次を掲載しておく…

◉ 第2章 経済交流と平和

1. 経済と権力政治 P.89

(18世紀のある論者はこう述べている)

権力政治の本質は利益の交錯にあり、経済政策の本質は利益の一致である。前者は戦争と失望と破壊へと導き、後者は社会統合、協力、そして労働の成果を自由かつ平和に分けることをもたらす。

◉ 序章 問題への視角

各国家は力の体系であり、利益の体系であり、そして価値の体系である。したがって、国家間の関係はこの三つのレベルの関係がからみあった複雑な関係である。国家間の平和の問題を困難なものとしているのは、それがこの三つのレベルの複合物だということなのである。しかし、昔から平和について論じる時、人々はその一つのレベルだけに目を注いできた。

言いかえれば、国際社会にはいくつもの正義がある。だからそこで語られる正義は特定の正義でしかない。ある国が正しいと思うことは、他の国から見れば誤っていると言うことは、決してまれではないのである。そこにも緊張と対立が起こる可能性がある。

(注意) 以降は、引用部分はフラットに普通の表記とし、逆にブログ筆者の感想、コメントの方をかっこくくり形式とします。※ 本件は個人ブログの備忘録としての個人の学習用途、後日の復習、副読の意図である。(著作権侵害しない)

◉ 第2章 経済交流と平和

I. 経済と権力政治 P.93〜

他国の富の二重の機能

(前略) 経済力の対象とそのあり方は、国力の基本的な構成要因として、国際政治における権力闘争に大きな影響を与えるものだからである。大体、富は二重の性格を持っている。それは自由放任の経済学説を解いたアダム・スミス(1723〜1790)によって認められているのである。

  • 隣国の富は、戦争もしくは政略上の交渉においてはわが国に危険を与えるけれども、通商貿易においては利益を与えるものである。というのは、武力衝突が起こったときには、その隣国の富はわが国にまさる陸海軍を備えることを可能にする。しかし、平和が保たれ、相互に貿易が行われるときには、隣国に富があるからこそ、わが国の物産は高い価格で売ることができるのだし、市場を見つけることができるのである。(国富論)

アダム・スミスはこの富の二面性を指摘することによって、「他国人民の繁栄を懸念の目で見、他国の利益を自国の損害とみなす」重商主義的な考え方を批判した。それは当時の歴史的文脈においては疑いもなく正しいものであった。

しかし、隣国の富が平和のときには利益を与えるけれども、戦争のときには危険を与えるものであり、そして、国際社会において戦争と権力闘争が大きな比重を占める以上、隣国の富を喜んでばかりはおれないのである。
 1815年のウィーン会議から1870年代の終わりに至る半世紀は、「イギリスの平和」と呼ばれるように、イギリスが指導的地位を占めたが、それはイギリスが他国に先駆けて工業化に成功し、世界経済において独占に近い地位を占めたためであった。

例えば、国力を表すと言われる鉄の生産を見ると、1870〜74年のイギリスの銑鉄生産は年額平均640万トンで、ドイツ、フランス、アメリカ三国の合計年額平均520万トンを上回っていたのである。紡績業についても石炭の産額についても、同じようにイギリスは圧倒的な優勢を示していた。それは文字通り「世界の工場」であった。それに加えて、イギリスは世界の各国に資本を供給し、海運業においても独占的な地位を占めていたのである。

 もちろん、経済的な富はそのまま他国を支配する力ではなく、平和の19世紀前半には他国に恩恵を与えるものでもあった。イギリスはその優越した地位を懸命に使ったし、特にイギリスが海軍国で陸軍をほとんど持たなかったために、他のヨーロッパ諸国に直接の脅威を与えなかったことは重要である。

また、イギリスが多くのものを輸入しなければならず、常に入超であり、その入超を外国に投下した資本の利子と、海運業及び技術輸出による収入でうめていたことは、通貨のスムーズな流れを確保し、他国の経済にもその場所を与えるものであった。

 とはいえ、イギリスが「世界の工場」の役割を務め、他の諸国が原料及び食料の供給者となるという分業形式は、経済的にイギリスに有利であっただけでなく、国際政治における権力闘争ということを考え、国民国家の独立ということを考えるときには、他の諸国の満足し得ないものであった。当時の国際経済の構造は、一応は、諸国家の間の協力関係と言うことができたけれども、イギリス以外の国のイギリスに対する依存性が相当高いものであったことは否定しえないのである。そして依存関係があるところ、支配関係が生まれやすいことは言うまでもない。

この本を返却する期限があと三日。予約がなければ1週間は延長可能。だけど、集中して読まなければ効果がない。▶︎延長した

◉ 第2章 経済交流と平和
II. 権力政治と経済交流の分離

米ソの勢力圏…(割愛) ▶︎(ソ連アメリカ資本による収奪の話) それに対して次の項目 : 

支配 - 従属関係の終了 P.108〜

しかし、こうした一方的な関係は、実力による圧迫を伴わない限り、長つづきするものではない。そして、現代は軍事力を使用することへの制約が極めて強い時代なのである。

1つには、軍事力の破壊力があまりにも大きくなったため、それを使用することの危険性が増大した。それはすべての戦争を不可能にしたわけではなく、したがって、軍事力は使用されるかもしれないという可能性によって影響力の源泉となっているし、その意味で依然として国際政治の決定的要因であるけれども、しかし、軍事力が容易に使用され得ないものになったことは行否定し得ない。

(中略)…

この変化は西ヨーロッパにおいて、最も明白に現れている。大体1950年代の半ばには、ヨーロッパ諸国は戦争による破壊から立ち直って経済発展をはじめたし、欧州経済共同体における経済統合の成功は、アメリカ経済にあまり劣らない実力を与えた。それに米ソの対立は、両者が現状を実力で変えることの不可能を知るとともに、凍結していった。

「国際政治」恐怖と希望(改版)
著者 高坂正堯 (中公新書)   目次👇

前書き

序章 問題への視角
I. 権力闘争の変質

II. 国際政治の3つのレベル

第1章 軍備と平和

I. 勢力均衡

II. 軍備縮小

III.  軍備規制と一方的段階的軍縮
第2章 経済交流と平和

I. 経済と権力政治

II. 権力政治と経済交流の分離

III.  エゴイズムと相互の利益

第3章 国際機構と平和

I. 強制力の問題

II. 世論の力

III.  国際連合の意味

終章 平和国家と国際秩序

I. 国際社会と国内体制
帝国主義論/平和国家の現実/「悪は弱さから生まれる」

II. 現実への対処

国家の行動準則の欠如/現実主義の立場/絶望と希望
参考文献

(出所 : 終章 平和国家と国際秩序 I. 国際社会と国内体制「悪は弱さから生まれる」からの長文。とても大事な結論に近づく。抜粋し引用

 例えばルソーは、世界平和相互に独立し、あまり交流を持たない孤立する状況でしか生まれないと説いた。明らかにその理想状態は、現在の世界では実現しそうもない。しかし第二章で検討したような交流の危険を考え、南北問題の解決が諸国家の融合によってではなく、逆に諸国家の独立性の回復または維持によってなされることを考えると、ルソーの理想境はここにがぜん現実味を帯びてくる。

 また、第1章における検討も、第3章における検討も、諸国家の主権の否定が問題を解決し得ないことを示した。すなわち、自己の問題は自国の中で解決すること、他国を羨望しない事は、平和な国家の重要な条件なのである。『エミール』の中でもルソーは語っている。

 "一切の悪は弱いことから生ずるものだ。子供は弱くなければ悪くない。強くしてやれば善くなる。なにごとでもできる人は決して悪いことをするはずがない。"

( 引用部分、続く )
たしかに、自国の経済を運営することができず、自国の独立を守ることができない国は、他国に積極的に危害を加えることができないにもかかわらず、混乱と戦争の原因になってきたし、今もなおその事情は変わっていないのである。もちろん、経済的にも軍事的にも、効率的な独立は問題にならない。しかし、相互依存と独立はけっして矛盾しないのである。

 ただ、そのためには、独立を保つ力は制約されたものでなくてはならない。カントはそのための条件を問題にした。彼は永遠平和のための第一確定条件として、「各国家における公民的体制は共和的でなければならない」と述べたが、それは、そうすることによって国家の力を制約するためなのであった。彼がこの条件をいかに重んじたかは、彼は世界の諸国家がさまざまな体制を持つことを許容し、それを望ましいとさえ考えながらも、この共和制と言う点についてだけは一致しなければならないと考えていたことから明らかである。

 この場合、カントの用語法の共和制とは、だれが政治権力を持つかということではない。それは権力の行使の仕方、統治の方式に関する区別であって、共和制とは専制の対極として、政治権力の行使が制限されていることなのである。

  •  カントは共和制の特徴として、(一)人間の権利を(多数に依存しないで)保障する、法によって規定された自由、(ニ)権力の分立、(三) (自由選挙と結合した)代議制、をあげた。

それが権力の制限を十分にもたらすものであるかどうかは別としても、カントは民主政治を共和体制と区別していたことは、注意しておく必要がある。カントは民主政治において多数の専制が起こることを認識していた。それから見ても明らかなように、彼は世論の機能についても単純な楽観主義などを持ってはいなかった。世論の力への盲信は、後世の通俗化によっておこったのである。そして、国際機構に意味を与える国家体制が、世論の力が強い国家ではなくて、その権力が制約されている国家であることは、第3章における分析から明らかである。

 このように見てくると三つの章における国家の三つの属性についての検討は、平和的な国家の条件について、次のような教訓を与えているものとして、まとめることができるように思われる。

  • 平和な国家は、その独立を守るだけの力を持っていなくてはならないが、
  • その軍備によって国家が軍国主義化されていてはならないし、
  • その軍備を十分に規制することができなくてはならない。
  • 経済的に言えば、他国に支配されざるを得ない国家も、他国を支配しなければならない国家も、ともに平和な国家ではない。
  • そして、国家の権力は制約されていなければならず、言論の自由の欠如、多数の専制、ある理念への狂信などは、国家権力の制約を著しく困難にするものとしてしりぞけられなくてはならない。

(注) 本メモ📝において、段落の区切りは本書にできるだけ忠実に書き写したが、一部上の記述のように、⚪︎で区切りをつけて後で読み取りやすいように工夫を施したこと。

(抜粋と引用を続けて、II. 現実への対処 から)

国家の行動準則の欠如

混乱した国際政治の状況は、測り知れぬほど大きな困難を各国家に投げかける。なぜなら、混乱した国際政治の状況は、邪悪な国家が存在するからおこるのではない。またそれは人びとの道徳的堕落によって説明されるものでもない。混乱した国際政治の状況とは、各国の行動を規律する準則が弱まり、他の国がいかなる行動様式を取るかを理解できないか、あるいは信用できない状況なのである。

現実主義の立場

 こうして国際社会における困難状況に直面した場合、人びとの態度はニつに分かれる。その一つはこうした混乱状態を直接になおそうとするものである。この考え方がある大国の力と結びつかないときには、国際連合国際法を強化しようと言う考え方になる。しかし、国際社会の分権的性格がそういう解決法を可能にしているのである。国際連合の力を頂戴しようと言う考え方が、いかに不可能であり、望ましいものでもないかは既に述べた。その議論は国際法についてもそのまま適用することができる。

 国際法は強制力によって裏付けられていないから、各国が一般的に承認している原則以上のものを作ることができないし、また、作っても破られることが確実なのである。ルソーの言葉を借りれば、それは「ありえない」計画なのである。逆に大国の力と結びつく場合には、「ありうる」計画となる。しかしそれは、すでに述べたように現代の十字軍戦争(聖戦)を生み出してしまうのである。

 それは対立の原因そのものを除去しようとすることを断念することから始まる。確かに、現在の世界における対立は、いくつかの正義が対立し、国家の行動を規律する準則がないことによって起こるけれども、それを直接に除去しようと試みる事は、無意味であるか、あるいは混乱を助長するだけであるからである。(中略)

 国際政治においては、対立の真の原因を求め、除去しようとしても、それは果てしない議論を生むだけで、肝心の対立を解決することにはならないのである。それよりは対立の現象を力の闘争として、あえて極めて思想的に捉えて、それに対処していく方が賢明なのである。 

 それは例えば、医術で言う対処療法と似ていると言えるかもしれない。医師はある病気の原因がわからないとき、あるいは患者の病気の原因を直ちに良くすることができないときには、表面に現れている病状を治すように努力する。

この後の、高坂正堯先生の、本書のまとめや結論の記述ところは、本書をまた読み直して復習することにしよう。最後の小見出しでは、

絶望と希望、と記されていること。大略

しかし、希望することを止めてはならない。

最後の三行だけを抜粋してメモを終わろう。

(注) 本ブログはオーナー自身による備忘録やメモを兼ねるものです。ここでの掲載内容は全て後日、この一冊を読み返すための『手がかり』として、多く引用、テキストデータを利便性のためだけに残したものであり、公式に外部へ向けて発信する意図はありません。

✴️ 最後の三行だけを読んでもこの書の主張は理解できない。なぜならその重要な核心と本質的な主張や議論は、中ほどにたくさんが散りばめられ、各章での議論を深めているからである。従って、中心的な議論や著者の自説というものは最後だけを読んでわかるものではなく、ここでのテキスト抜き書きの抜粋と引用を持って、この書の要約を構成できるものでもない。

戦争はおそらく不治の病であるかもしれない。しかし、われわれはそれを治療するために努力し続けなくてはならないのである。つまり、われわれは懐疑的にならざるをえないが、絶望してはならない。それは医師と外交官と、そして人間の務めなのである。〔本書の最後の三行を引用した〕

心の中のたからもの

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(写真は、2024/5/16 の尾道水道、瀬戸内海)

106+ 写真はこちらから→広島三泊四日の旅(尾道・広島・宮島厳島神社・呉) - ときおり人生ジャーナル by あきしお ⁦‪@accurasal‬⁩

キーワード : 武蔵野美術大学、研修旅行、奈良、青春18切符岐阜県大垣、名古屋、神戸、倉敷、広島、福岡、大分 - ある紀行文 から綴る想い

"玉手箱を開けた浦島太郎みたいな気持ち" 🔗▶︎https://x.com/nikkeithestyle/status/1812275819038839111?s=46

美大4年生だった夏に行った日本縦断の旅。名古屋、神戸、倉敷、広島、福岡。各地で歓迎してくれた同級生と家族との思い出とは。
14日付朝刊・エッセイ「俺に任せろ」
#nikkeithestyle  #柴田文江  #青春18きっぷ

出典 : 日本経済新聞 (The Style / 2024/7/14)

全部で20日ほど。3泊4日分位のバッグだけ持って、コインランドリーでTシャツを洗濯しながらの旅。日焼けも気にせず、少しくらいの無理もきく。自分自身も身軽だった。子どもから大人になるちょうど間の時間。その時にしかできない旅があった。 〔出所 : 『俺に任せろ』柴田文江〕

しばたふみえ : プロダクトデザイナー山梨県出身。エレクトロニクス商品から、家具や日用雑貨、ホテルのトータルディレクションまで、国内外のメーカーとのプロジェクトを手がける。代表作にオムロンの「けんおんくん」など。多摩美術大学教授。

👉人生後半に入ってくると、自分の若かりし頃のことを思い出すと単なる懐かしさを超えた、何か宝物のような気持ちがよみがえる。

この柴田先生の "俺に任せろ" に感じるのは、

  • 二十代独身女性美大生の "Discovery Japan" 
  • 二度と巡り合わない独特の空気感、そして

「それまでの夢みたいな時間が一瞬で消えた。玉手箱を開けた浦島太郎みたいな気持ちになった。」

  • 忘れえない、心の体験

これを読んだとき、男女の性別を超え、自分自身の大学生時代を思い描いてしまう。私の青春時代。これとは似ていないけれど

私の大学生活はテニス🎾一色。旅は、卒業旅行で同級生5人で賢島から和歌山、那智勝浦へ行ったことに尽きる。

  • その時の四人とは卒業以来、一度も会っていない。集まってもいない。そこに深い理由は何もないのだけれど、何か不完全さ、不足を感じずにはいられない。けれども、
  • 一度きりの計画旅。それは過ぎ去った遠い昔のことであり過ぎて、記憶の彼方にかすかにぶら下がっているだけ。思い出しつつ酒を酌み交わすには色褪せすぎたかもしれない。
  • そういえば会社に入った若い頃の沖縄旅行も、バリ島も、同じメンバーでまた会う機会は巡ってきていない。

『その時にしかできない旅』は誰にとっても貴重で、おそらく2度とない一度きりの "人生のとき"、のとき。

過去を思い出すひとの脳メカニズムは、誰にでも備わっている魔法の魅力に違いない。

「その時にしかできない」二度とない「旅」、それこそ、心の中の宝物 に違いない。

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東京スカイツリーを初めて見上げたあの日々。

 

 

大統領選びの根本と民衆心理 (U.S.A.)

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☝️海はどこまでも続き地球をつないでいる。現状が続けば問題はない。ある勢力は力で他を威嚇し、未来を変える意図を持ち行動している。知らずに対応せず静観をするならば、変化の結果の不都合と不幸はこちら側に落ちてくる。

美しいものを見て、豊かに感動できるのは身辺が安全で安心な生活があるからだ。

参考文献▶︎ 「国際政治」恐怖と希望 (高坂正堯)から…付録あり - ときおり人生ジャーナル by あきしお ⁦‪@accurasal‬⁩

 アメリカの大統領選挙が11月に迫っている。残り3ヶ月ほどだ。最近も従来からずっと続けている日本経済新聞の新聞紙面をウォッチしている。現役サラリーマン時代との違いは明白だ。現役の頃は、産業や、テクノロジー、企業動向、そしてグローバリゼーションやオフショア生産のようなビジネスに直結した内容を集中的に読んでいた。

今はどうだろう。自分の身近なところで、年金を含む納税のこと、経済対策や金融面。特に株式市場や為替変動の状況が気になる。そしてこれらファイナンシャル面に直接影響を及ぼすと思われる国際情勢、大国の対外経済政策やその元になっているはずの内国政治、民衆の求める心理面など。直近では11月に迫ったアメリカ合衆国大統領選挙の行方だ。

そこで今日読んだこの記事だ。

その後半をほぼそっくり引用させてもらい、納得し非常に合点がいった点を個人メモ📝しておきたい。11月結果が出たとき、今日のこの理解がどう結果につながったか、あるいは異なったのか、そこをしっかりと振り返ってみようと思う。

以下、旧Twitterに連ツィしたものをスクショで✍️メモ掲載しておいた。日経新聞コメンテーターの主張の核心は正しく抜粋引用して網羅されているはずだし、もっといえばこれは実際にはアメリカの学者のフィールド調査結果から構成した記事である。だから一次情報として、米国のトランプ候補を支持する人たちの "心理状態" を明らかにした内容 ということになろう。

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以上でトランプ大統領候補を支持する人たちのベースにある心理状態は非常によくわかった。

・(だからといって私がトランプを支持していると言うことを意味しない) (逆に民主党の現職大統領バイデンを支持しているとも意味しない)

気になっているのは世界の行方だ。この地球はこれからどういう方向に進んでいくのか。

これから自分がどうなるか、世の中はどこへ行くのか。人間には「実存的不安」、すなわち生きることへの不安が根底に存在するとされる。〔矢野寿彦〕

トランプ前大統領は、電話一本で戦争を止めることができると豪語する(うそぶく)。ウクライナ戦争を止めるという。

  • 現実はいくらアメリカ大統領であろうともそんなに簡単ではない。ただし意気込みや意欲であれば、大言壮語はそういうこと。

自分が大統領のときには戦争が起きなかったともいう。(まぁそれは真実だ)  しかし世界の各国がふたつの陣営に分かれぶつかり合い、歴史上大きく揺れていること、リスクが顕在化しつつある現状認識には間違いないだろう。

では民主主義を守ることは正義なのか。専制主義の独裁的リーダーの下にある国家は絶対的なる悪なのか。

本質は、民主主義 対 専制主義ではなく、それはステレオタイプ。問題なのは現状や国境線、アジア太平洋海域を力で変えようとするその意志や行動である。いわば拡張主義のような覇権を自ら求めんとする国家リーダーの、その心理こそが問題ではあるまいか。

  • 北朝鮮を見るとき。その行動原理は戦争状態を正式に終わらせてはいない朝鮮半島情勢において、米韓合同演習に脅威を感じ、また米国政権に反発している。それは自国の安全保障への脅威と見なしているからである。そうであれば、彼の国の行動は自衛のための行為だと見ることができない、と断言まですることはできない。
  • ロシアのウクライナ軍事侵攻はどうだ。NATOに加盟していない西側諸国であるが元はロシアとのつながりが深い。ソ連時代にはその陣営にあったウクライナ。一方的に軍事侵攻したと非難されているプーチンそれはその通りだと私も思っている。
  • しかし一方、プーチンの頭の中にあることに考えを巡らせるとき、それはNATOの軍事的拡張という脅威によるロシア自衛のための行動で、"先制的な自衛のための手段" だといえなくもない。その理屈が彼らの中にはある。

一体正義とは何か、それはどちらにあるのか。

否。それぞれの国にはそれぞれの立場がある。それがそれぞれの正義なのである。いずれかが正義ではない。正義の定義は国により明らかに違っている。それがこの世界の国際政治におけるリアリティ、現実なのだ。

今年2024年に西側・自由主義陣営といわれる国家の選挙による民主主義的プロセスによる政権交代などが相次いで起きる。一方、対峙する国々では明らかに現在の為政者が長期政権を確固たるものとし、その点においては首尾一貫する安定政権である。この矛盾皮肉ではないか。また世界の警察官だったアメリカ合衆国はその責任を放棄しすでにその立場にない。

先述した新聞コラム記事で明白なこと。それはもしもアメリカ国民の大勢が、選挙結果によりトランプを大統領に選ぶとしたら、自国内の課題を優先したいがため。その気持ちを他国からは否定しようもない。内政不干渉の原則において誰もその決定に対し後ろ指をさすことはできない。

  • そのとき、ロシアとウクライナイスラエルパレスチナ北朝鮮、中国と台湾。この世界はどう動いていくのか。この複雑系の世界でその予測は難しい。しかし、
  • 力による現状の変更や、その結果起こるかもしれない軍事衝突、最悪の場合の戦争行動は絶対に許すべきではないし、また起きてはならない。そのために、
  • 外交による努力があり、国同士のあるチャンネルによる対話がある。それらが正しく機能するべきと思う。
  • その点において今年後半の世界情勢、来年の「近未来」、経済と金融の行方、安全保障はどうなっていくか。私たちの明日の生活に直結しており絶対に目が離せない。

そのことだけは間違いなく、明記しておこう。

 

(日経新聞・経済教室) 米中貿易戦争、TPPの拡大・連携を目指せ  川瀬剛志氏

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7/17 投稿の、(1/2) こちらがスタート。

(私ごとで恐縮ですが) 2017/10 - 2018/12 トムソン・ロイター(FTAリードコンサルタント) 勤務時代に、FTA講演で知己を得た、弁護士の畠山祐介氏。
現在・英国駐在外交官の畠山さんが、2019年だったか “国際取引法学会” での日EU EPAに関する論文発表時のコメンテーターが川瀬剛志氏でした。的確で骨太の指導コメントを発していたのが、印象に残っています。

▼ということで、
日経新聞の経済教室(7/17付) 記事の全文です。
👇

米中貿易戦争、TPPの拡大・連携を目指せ 
川瀬剛志氏 上智大学教授 経済教室
2024年7月17日 5:00 [会員限定記事]

ポイント
米大統領を目指す2氏の対中戦略は一貫
○トランプ氏当選ならWTO体制にも打撃
○日本は多国間の通商秩序の維持に尽力を

11月の米大統領選は、6月の討論会でのバイデン大統領の不調や先週のトランプ前大統領への銃撃を受けて混沌としてきた。ただどちらが当選しても、対中通商戦略は大差ないだろう。米通商代表部(USTR)のタイ代表と前任のライトハイザー氏も6月の講演で、トランプ・バイデン両氏が中国への見方で一致すると互いに認めていた。

◇   ◇

実際、表に示した両政権の主な対中措置を種類別に見ると、高い継続性・関連性が認められる。
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こちらが(2/2) (続き…川瀬剛志教授@経済教室)

まずトランプ前政権が課した「1974年通商法301条」による関税をバイデン政権も継続した。5月には最高税率を25%から電気自動車(EV)100%、半導体50%などと上げる方針を表明した。トランプ氏が始めた「1962年通商拡大法232条」による鉄鋼・アルミ製品への追加関税も維持したままだ。

2022年10月以後のバイデン政権による先端半導体関連の輸出規制強化も、トランプ政権時代の輸出管理改革法(ECRA)制定(18年)、事実上の禁輸対象となる「エンティティ・リスト」への華為技術(ファーウェイ)追加(19年)や半導体関連の輸出管理規則(EAR)適用に端を発するものだ。

またトランプ政権は本来、安全保障が目的だったEARを、ウイグルや香港での政治弾圧への貢献を理由に中国企業に適用した。これもバイデン政権による人権基準を設けたEAR改正につながる。22年6月施行の「ウイグル強制労働防止法」も、トランプ政権下で活発になった、強制労働を理由とした中国製品の通関差し止めの延長線上だ。

もっとも同盟国との協力方針は大きく異なる。バイデン政権はインド太平洋経済枠組み(IPEF)で対中包囲網を築き、人権保護目的の輸出管理では「輸出管理・人権イニシアチブ」や米EUの「貿易・技術評議会」などの協力枠組みを構築した。トランプ政権にはみられなかった対応だ。

この点は異なるにせよ、次期大統領がどちらになるかにかかわらず対中強硬姿勢に大きな変化はなく、世界貿易機関WTO)ルール無視の場外乱闘が続くだろう。ただトランプ氏の場合、ライトハイザー氏も近著で提唱する「戦略的デカップリング(分離)」を掲げ、より象徴的で過激な措置に傾斜する恐れはある。

実際、トランプ氏は自称「タリフマン(関税男)」らしいアイデアを披露する。第一に、全輸入に普遍的基本関税10%を課し、さらに中国産品には60%、中国の直接投資によって生産されたメキシコ製自動車に100%の関税を課すという。現状の301条関税はEVなどごく一部を除けば依然25%以内だが、第2次トランプ政権誕生なら大幅に引き上げることになる。

第二に、中国に対する最恵国待遇(MFN)の停止である。01年の中国のWTO加盟以前、米国はMFNの対中付与を毎年審査の上で更新しており、中国にMFNを恒久的に与えることは必ずしも当然ではなかった。ただ、こうした極端なアイデアは全て選挙向けかもしれず実現は不確定だ。

他方、中国に不利な政策でも、別の理由で継続されない措置もありそうだ。自由貿易を嫌うトランプ氏は対中包囲網のIPEFから離脱をほのめかす。友好国との間で供給網を構築する「フレンドショアリング」の枠組みも同じ運命かもしれない。また反・脱炭素の立場から、EVの税額控除も廃止が見込まれる。

◇   ◇

こうした米中摩擦の継続や、激化した場合の日本への影響について、国際通商秩序の観点から以下の2点を指摘したい。

第一に、中国を含む東アジアの通商秩序構築への影響である。5月の日中韓首脳会談では、質の高い自由貿易協定(FTA)の交渉加速に合意した。しかし、特にトランプ氏再選でデカップリングの圧力が強まると、日本としては中国との経済連携の模索が難しくなる。ハイレベルなFTAを目指すとなれば、米国の輸出規制に協力する半導体など戦略物資へのアクセスについて中国から切り込まれ、妥結は困難であろう。

第二に、WTO体制の維持にも影響が及ぶ。すでにWTOの紛争処理小委員会(パネル)が301条関税や鉄鋼・アルミ関税の協定違反を認定しているが、米国はかたくなに撤廃に応じず、トランプ氏再選なら対立激化のおそれもある。

6月下旬には16人のノーベル経済学賞受賞者が、トランプ氏が再選した場合の米経済への悪影響に懸念を表明した。またポール・クルーグマン氏は高関税が、米国がもはや世界経済のリーダーたり得ないという負のメッセージとなることを危惧する。

特にMFNと関税ルールは、自由・無差別な貿易を標榜するWTO協定の中核的な原則である。これを公然と米国が無視すれば、WTO体制のますますの地位低下は必至だ。また、米国の対中通商制限を妨げる可能性のあるWTO上級委員会の改革も頓挫するだろう。WTO体制への依存度が高い日本としては痛手だ。

米中摩擦がさらに4年間続くとすれば、ルールの支配による多国間自由貿易体制に依存する日本は、他のミドルパワーと連携して維持に努める必要がある。

例えば、機能を停止しているWTO上級委員会の再開に米国が消極的なら、当面は有志国が設けた「多国間暫定上訴仲裁アレンジメント(MPIA)」の活用で、限定的でも紛争解決のルールを取り戻すべきだ。中国もMPIAの当事国であり、その経済的威圧を封じる手段にもなる。

他方で日本はカナダなど改革・良識派のミドルパワーと欧州連合EU)からなる「オタワグループ」の一員として、WTO改革に貢献していくべきだ。

また、米中は対立の一方で相互依存が高く、双方が属するWTOは依然として利害調整の場たりうる。22年の新型コロナウイルスワクチンの特許保護免除や漁業補助金協定への合意は、パンデミックなど人類の共通課題への対応なら米中が妥協できることを示した。

例えば米中は気候変動対策での協力に合意している。今後、WTOが進める「貿易と環境持続可能性に関する体系的議論」で気候変動関連の意義ある米中協力が成立すれば、WTOの交渉機能の回復にも貢献できる。こうした合意への日本の尽力が望まれる。

もっとも、徹底的なWTO嫌い・反脱炭素のトランプ氏再選なら、こうしたシナリオも描きにくくなる。

WTOに代わる広域連携の「プランB」としては、18年末に発効した米中不在の環太平洋経済連携協定(TPP)の見直しに注力すべきだ。

例えばデジタル貿易ルールについて米国はすでにWTOやIPEFでの交渉で慎重姿勢に転じており、まずTPPルールのアップデートが将来のWTO合意につながる。またTPPも締約国の拡大はもとより、より野心的にEU南米南部共同市場(メルコスール)など他の大型経済圏との連携を模索すべきだ。

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