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Brexit で回帰する大英帝国の行方

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出典 : 月刊グローバル経営 https://joea.or.jp/wp-content/%20uploads/2021_06_006.pdf

ブレグジット」と言う激震   (副題) 混迷するイギリス政治
(スティーブン・デイ、力久昌幸共著)  この本、詳細なので拾い読みした。

その要点をまとめてみた。
個人的な問いは、「大英帝国は返り咲くことができるか?」

 以下を読めば、EU離脱賛成派と反対派の人々の思想的なギャップや、その根底にある生活感・世界観の差異がごく簡便な形で理解できる。
同じ英国民でも正反対の立場になることから、Brexit心理的な背景が分かる。思想と生活感は密接不可分ということか、と。

 

 アメリカ合衆国の前回の大統領選とかなり相似形にも思えるところが興味深い。アングロサクソン民族の特異性だろうか? それとも人間の生き方から来る普遍的なフィーリングなのか。基本的に「よく分かる」気がする。

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その根本、基本的な深層風景の差は何か?

「Somewheres(定住)層」がEU離脱派であり、EU残留派は、「Anywheres(移住)層」である。私はどちらかといえば、Anywheres層だったが、退職した今は、Somewheres層かもしれない。FTA推進するなら思想信条的には前者であるべきだが…。

 

後付け分析的に私が付け加えるならば、生活感的にドメスティックで経済的な弱者になってしまったと考える人は概ね変化を望み、EUに幻滅を感じているから『出て行きたかった』。

 

 これら2者の対立点の中心に位置するのが移民問題であり、ナショナル・アイデンティティーにも深く関わっていることが分かる。

 このことは、おそらく世界のいずれの国でも概ね当てはまりそうな "普遍性" にも思える。どうでしょうか? 人間の習性なのではないか。

 

 イギリス社会🇬🇧(旧・大英帝国)に見られる分断を "定住層と移住層の分断の枠組み" で示したのが 👉Goodhart, David 2017の論文ということで本の中で紹介される。

この両派の分断がある…ということだ。中身を見てみる。

・Anywheres層 (移住を厭わない層)
特徴は →高い学歴、移住をいとわない。自律性と寛容さを尊重する。

かなりの規模となったこの集団は社会と政治を支配するようになっている。換言すれば、グローバリズム積極派EUに許容。

対して、規模はより大きいが社会への影響力はより小さい集団が S層(定住層) であり、アンチ・グローバリズムで、EU不許容の立場の人たちだ。

・Somewheres層 (定住層) 移民嫌い・不寛容

特徴は →低い学歴、特定地域に定住し安定となじみのあるものを尊重。集団アイデンティティーを重視。このS層は近年、社会的保守主義に基づく考えが公共の議論から排除されていると感じるようになった。

結果、政治が不安定になりEU離脱やトランプ勝利の反動が発生したと本著では解釈している。

 

・A層(移住層)はEUへの残留投票と結びつく。👉残留投票した有権者の多数は文化的価値を有益とする。

私なりの言葉で言えば、「(出張や海外勤務、観光などで)自国の外、つまりは島国から見た時の『海外』に出て、異なる文化の人たちとも寛容に交わることに慣れた、比較的知識層とも言える階層のひとびと、であろう。

 

・S層(定住層)はEUからの離脱投票と結びつく。👉離脱投票した有権者の中、圧倒的多数が社会的自由主義多文化主義フェミニズム(女性解放主義)、環境保護主義、そして、グローバル化や移民などに関係する文化的価値をイギリス社会にとって有害であるとみなしていた。

そして、A層とS層の対照的な世界観は、国民投票出口調査でも示されているとのことだ。

離脱派とは

 私なりの言葉で言えば、「島国に住み、古くからの通念や伝統をより重んじており…」、斬新な国家連合に居続けても良いことはない。他国に引き摺られて損をしている。

グローバリズムは悪。夷狄(いてき)異文化と交わると自分たちのよき社会が不安定になる。破壊される。そして何より経済的に損をしている被害者としての自分がいると強く自覚している。

 誤解を恐れずのメタファーで言えば、まぁ江戸時代末期・尊皇攘夷のひとびと…。不寛容。自国優先。他民族排斥。イギリスは偉大なり。

・どこかの国の一部分乱雑、ときに不穏当な行動をする人たちの雰囲気とよく似てはいないか?所詮は人間様は変わらない…

(ごく簡単なまとめ)

  • グローバリズムの波にうまく乗った。俺たちサーファー。移民を受入れても経済社会・自分達(思想や主義)として異物をうまく受け入れられるさ。
  • 自分たちでその環境や変化をガバナンスして乗り越えるだけのコントロール能力があるさ、と自ら確信的に考える層がEU賛成の残留派。

これに対して

  • アンチ・グローバリズム(江戸時代尊王攘夷的?)定住層の感じ方は、EU所属の継続では望んでいなかったよからぬ変化を無理強いされる。国家の独自的な自由度もない。移民は自分達労働力の脅威だから受け入れない。だから、独仏主導のEU政策なんかに縛られたくない。EUから離脱したかった。

👉結局、国民投票の結果は僅差で離脱が決まったが今も、この選択は正しかったのかとあらゆる面で批評や評価が合い半ばする。

 

スコットランド🏴󠁧󠁢󠁳󠁣󠁴󠁿は独立する可能性が取り沙汰される。プロテスタントが多い北アイルランドは、カトリックアイルランド🇮🇪と合体するのか。海で隔てられたアイルランドの間には国境や税関は今後どうするのかと言う行政と政治と宗教の問題が依然として燻ることになってしまった。

◉異なる出自の「お国」、その3つの旗印🏴󠁧󠁢󠁳󠁣󠁴󠁿🏴󠁧󠁢󠁷󠁬󠁳󠁿🏴󠁧󠁢󠁥󠁮󠁧󠁿を文字通り絵柄で束ねた ユニオンジャック🇬🇧 はTPPへの参加、野望を抱く中国への生理的反発をもとに太平洋を含む "世界" へ再度進出したい。今度は経済や金融で。

 かつて七つの海を支配したパクスブリタニカ様の強い国への回帰を夢見る。

トランプ主義に傾いた分断国家で斜陽に傾きかけたアメリカ🇺🇸と今まさに連携連動して世界のリーダーに返り咲こうと目論む。

経済安全保障アライアンスだ、ファイブアイズだ、移民国家でかつてのベンチャーだったアメリカ合衆国と、Great なる Britain にして、United なる Kingdom;それがジョンソンPMの考えなのではあるまいか。

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(出典 : Wikipedia

はたして、大英帝国は今から返り咲くことができるのだろうか?それは今後の国家運営にかかっている。政治力、ネットワーク、アライアンスにかかっているだろう。
アライアンスの力を信じるか、はたまたグローバリズムを信奉して継続するか。二者択一の問いなのか、それとも何等か新しい価値観では両立や併存が可能であるのか…。

アライアンスが2国間の連合とすれば、地域統合である、EUASEANはより縛られる運命共同体。前者の方が確かに自国の主張は通りやすい(ジョンソンPMの狙い)。FTA戦略の視点では、当面はアライアンスが勝っているようにも見えなくはない。かなり複雑で高度な方程式だと思える。

2021/7/1 追加