ときおり人生ジャーナル by あきしお ⁦‪@accurasal‬⁩

内外について個人の思いを綴る雑記帳です|andy-e49er | Twitter@Accurasal

新・幕末史 外交文書から読み解く

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NHKスペシャル取材班の著述になる新刊書「新・幕末史 グローバル・ヒストリーで読み解く列強 VS. 日本」幻冬舎新書715 (2024/1/30 第一刷) を絶賛読書中。GW休み。久しぶりに読みごたえある本に出会い、楽しませてもらった。

ドキュメンタリー仕立ての (...読んでいると映像が頭に浮かぶ...) NHKの ナレーションがそのまま著作に代わったような読みやすい文章。

 思えば学校の日本史教科書はなにか中途半端。要約しすぎの曖昧な感じが否めなかった。そんな日本史。

・この一冊では列強側からの見立てと、対比した江戸時代の徳川幕府や、朝廷(天皇)による王政復古後の新政府としての日本側理解と合わせて解説される。たいへん理解しやすい。なるほど!と目から鱗の新事実が多く呈示される。
✴️ 合点がいく、それはそういうことだったかすごいな!と思った新理解と解釈の発見は何か。

それは当時イギリス国が🇬🇧自由貿易帝国主義だった、ということ。
👉耳慣れない自由貿易帝国主義とは何か。

1) まず自由貿易を目指して相手国と友好なつきあいをする。そのための友好的支援もするが、

2) 相手国が従わない時には、言動で威嚇を行い、警告して自国理解や方針を押しつける。

3) 意図する策略をもって 実際に相手方に先に手を出させることにより大義名分を創り出し、その上で自武力で相手国を制圧(戦争)する。これは優先順位を併せた選択肢を有する"策術" である。外交技術論といってよいだろうか、純粋な植民地政策(帝国主義)とは異なる。

👉つまり、経済合理性による金銭的な見積りを主権国家として持ち、海外に派遣した外交官の相手国分析により、その冷徹なるコスト比較に基づいた上、

  1. 外交というソフトパワー と、
  2. 軍備力のハードパワー とを

しっかり意識して組み合わせる対応や国家の外交を発揮する。一面、事実上の覇権主義を発揮しているとも見えるところだ。

後者 (ハードパワー) を選択するには議会の予算承認を要することから、機関決定を必要とする民主主義国家としては、それは政治の帰結。

当時戦国時代を経て確立した江戸幕府は超安定政権とはいえ、所詮は京都におわす天皇を頂点とする朝廷という "王政" と 武士階級が治める藩とその大名諸侯の「長」(おさ)である征夷大将軍をトップとする武家政権による幕藩体制という権力の二重構造であった日本

そのようなヤマト国の国体より一段上を行く、先進の 欧米列強 という先進国の世界戦略での処し方だったのであろう。

 そういう "戦略" をもった上、日本に駐留する外交官 (公使) が情勢分析して、提案とともに本国に伝える。本国からは日本に対処すべき方針や方向性をを指示して、対日政策を進めていた。結果的に自国版図を力で拡大する帝国主義的でもあった。(しかし本当に幸いなことに日本は植民地化を免れた…)

 日本の下関戦争や薩英戦争。さらに続く内戦や列強が派遣した海軍との軍事衝突。歴史教科書で有名な江戸城無血開城幕臣勝海舟薩摩藩(今の鹿児島)の西郷どんとのトップ同士の "スゴい功績" であるかのように正規の歴史教科書では語られている。史実的には勝の為にする宣伝だった。実際そんな甘いものじゃない。

 当時の欧州列強や黒船のアメリカ合衆国が取り巻く日本の国際情勢を冷静に読み解くと、対外的な列強国の存在がよく理解できる。

戦いの裏で、各国の外交官が策謀を巡らし、熾烈なパワーゲームが繰り広げられた。スパイや武器商人が暗躍し、国際的なマーケットから破壊力の大きい新兵器が日本に流れ込んだ。(本書から抜粋)

策謀渦巻く中、欧州諸国、特に英仏から軍事顧問団の派遣や支援の形ではあるがある種の圧力もある中で、内戦の真っ最中という国家存続の危機感から生まれる国の未来、将来への恐れ。そこから生まれた当然の帰結だった。

そのことがかなりの程度この書で明快になる。矮小な日本・島国の中でふたつの権力が内輪揉めをしていては国が列強の植民地にされたり、欧州の強国に蹂躙されかねない‼️という強い危機感。

それらが公開された列強各国外交文書の報告やプライベートレターなど公文書の記録から明らかになる。読み解いた確かな証拠 (ドキュメント) として時系列の章立て毎にまとめられた出色のドキュメンタリー。

これこそまさにドキュメンタリー。

少し長めだが一部を抜粋・引用してみよう。

歴史の謎を解き明かす、鍵は外交記録にある  (第6章 列強のパワーゲームと鳥羽・伏見の戦い)

 戊辰戦争は、新政府と旧幕府勢力が激突した日本史上最大規模の内戦だ。始まりを告げる鳥羽・伏見の戦いから、最後の五稜郭の戦いまで、五百十八日。その間戦場は、近畿・関東・東北・北海道と、刻一刻と変わったが、すべて国内で起きた戦いであり、日本人同士が殺しあった。

 そのため疑いなく、日本史の一コマとして描かれてきた。それは無論、間違いではない。だが、この戦争は同時に、世界史の中で新たな近代国家として、日本が初声を上げ、明治と言う新時代が走り出す契機でもあった。だからこそ国際情勢を変化させる重大事件として欧米列強の注目を集めることになった。

 戦いの裏で、各国の外交官が策謀を巡らし、熾烈なパワーゲームが繰り広げられた。スパイや武器商人が暗躍し、国際的なマーケットから破壊力の大きい新兵器が日本に流れ込んだ。

 欧米列強の野望が渦巻く中で、密かに植民地化の企てが進められていた。まさに、内憂外患。かつてない危機に直面した戦いの諸相を、海外の公文書館で発掘した歴史資料を交えて、グローバルな視点で見直していく。

 日本史と世界史の垣根を取り払うことで、幕末史の転換点となった激戦の数々をより正確に、より俯瞰的に捉えることができるはずだ。

 戦いの歴史には、「勝者のバイアス」の問題もついてまわる。最終的に戊辰戦争の勝者となり、幕府から権力を奪取したのは、新政府だ。令和の日本は、明治・大正・昭和・平成とその延長線上にある。

パクスアメリカーナ以前の、パクスブリタニカかあるいはこの段階では世界の覇権覇者ではなく、当時のロシア帝国と鎬を削り疑心暗鬼を募らせた英国の薩長連合との関係が国の行方に大きく作用したという一面にして相当な影響を及ぼした英国外交が、極東日本にさほど大きなものとして及んでいた史実がよくわかる。

そのキーワードは🇬🇧駐日英国公使パークスだ。

👇「幕末」ワードで画像検索の結果画面から

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  • 現代の某A元首相が提唱して随分と喧伝されるインド太平洋地域の"法による支配" という自由主義・民主主義も、一皮剥けば幕末の開国直前の当時と底流では相通ずるところがあるのではあるまいか。
  • 帝国主義専制国家による現代覇権主義ならぬまた別の類。同志国による緩やかな同盟。共に進もうとする複数国家による世界政治の覇権争いという局面だったように思える。

旧幕府の重臣たちによる幕藩体制の維持や尊皇攘夷派が成した王制復活した朝廷を権威づけする新政府との争い。それは鎖国の次なるステージ。 幕藩体制の崩壊としての日本の内戦

最終局面の箱館戦争の背後、その影には、間違いなくロシアと英国によるせめぎ合いがあったこと。アジア地域のファーストランナーである日本に対して自国を優位にするための覇権争いがあったという史実が裏付けされる。日本に対する英露の異なる思惑が、明治維新の歴史の奥深くでは複雑に絡まっていた。

 

前向きなインスピレーションが湧くという類の書ではないけれど、中学高校で習う日本史・世界史より、間違いなく格段に面白くそして納得感が極めて高いドキュメンタリーだった。

長〜い文章、お疲れ様でした。

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ところで。

こうした読書を進めたところで、心中で対比がもたげ書かずにいられないのがハウツーもの。

先日同時期に斜め読んだ「定年ひとり起業 生き方編」は軽めの一冊。いゃ軽すぎてまるで週刊誌や月刊誌ネタ的。だから読み易いといえばその通り。

  • 何百だか何千冊だかの生き方の書籍を踏破したらしく、そのエッセンスを凝縮した内容も含まれてあるらしいが、昇華した記述、ではない....。
  • 参考本の「紹介」が紙面を多く占めることは30才代読者になら◎かもしれない、要点いいとこ取り的なキュレーション本📕
  • 読み捨てレベルだから私にはほとんど響かなかった。(辛辣評価だけど正直)
  • その理由に著者自身ひとり起業のご自慢の香りが強すぎる点、これが大きい。他山の石にしたい。