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『戦争と人類』人がいる限り戦いはなくならない

1943年カナダ生まれ、ロンドン在住の作家、歴史家、ジャーナリスト Gwynn Dyer 著『戦争と人類』を今読んでいる。(翻訳者、月沢李歌子 ハヤカワ新書 2023年10月25日初版) 

示唆に富む良書だ。

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戦争はどうしたらなくせるのか、の困難な深淵を抉り出している。国連🇺🇳についての評価も、そう言われてみれば正鵠をついている。リアルな世界をストレートに描写している。

この一冊を大学時代に読んでいたら、何かが違っていたかもしれない。
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  1. いわゆる勉強とか学校の授業とか。知識や教養として『知ること』。概念的基本学問
  2. また別の、成人以降・会社時代の業務関連の実務研修など。学問以外の応用的実利。ビジネス遂行に必要な『知っておくべきこと』『知らなければならないこと』

いずれもそのときどきやむを得ない理由で学んだ。例えば必修科目として履修し単位を取得しなければいけないとか、業務上必須であるからなどの要請で学んできた事柄だ。

それに比べ、今この本を読む理由 : それはシンプルに『ロシアのプーチンが2022/2に(旧ソ連邦の)隣国ウクライナに軍事侵攻、戦争が今も続いている』こと。自ら読む動機と理由がある。

さて、著者について : 

  • 著者は1973年ロンドン大学軍事史と中東史の博士号を取得。その後、1977年までサンドハースト王立陸軍士官学校に上級講師として勤務。
  • カナダ・アメリカ・イギリスの海軍に予備役として在籍した経験を持つ。
  • 1980年代以降は主にジャーナリストとして活動。新聞へのコラムの寄稿やテレビ番組の制作に携わっている。著書に「地球温暖化戦争」がある。

そしてこの書は著者のバックグラウンド・職業軍人戦争論ではなく、『戦争をしないためにはどうすべきか』という "平和を希求する考察" なのである。この書を借りた理由は日経新聞の評論でそう知ったから。

WW II戦勝国の五大国、つまり安全保障理事会常任理事国はいわゆる拒否権を有するが、そのことはすなわち国連決議による自国への国連軍侵攻や国連による統治などを受けない『特権を持つ』と解説されている。

これは見るポイントが移動し、目から鱗。なるほどと感心して自身の認識を新たにしたところだ。

(抜粋・引用) 国連が力を持つことを国粋主義者たちが不安に思うのは当然だろう。国連は戦争を終わらせるために設立されたからだ。(中略) 国連の創設者たちは、隣国による攻撃に対して、それぞれの国の安全を保障し、国際紛争に関する決断をくだし、それを実行するには、強力な軍隊を指揮下におく必要があるとわかっていた。実際に、国連憲章にはそうした軍隊に関する条項がある。

【 わずかな原則、大きな力 】

力なくしての正義は無益である。

(ブレーズ・パスカル)

国連が思い描かれた通りに機能していないのには理由がある。国連が実際に軍事力を持てば、各国の政府を支配するようになる。そういった事態は、当然、どの国の政府も受け入れられない。

 国際戦争を終わらせるためにどうすべきかはわかっている。少なくとも1945年以降、ずっとわかっていた。だが、進んでそうするつもりはない。

 抵抗することができないほど強大になった国連の決定によって、いつか自国の利益が損なわれるのではないかと懸念するあまり、戦争のリスクと共存することを選んでいる。

◉ 国連はこれからも今までと同じように、聖人の集まりではなく、森番となった元密猟者の集まりであり続け、公正平等の基準によって意思決定をすることはないだろう。全人類が従う公正平等の概念は存在しない。

👉これは正鵠をつく鋭い指摘だと思う。

( 続く…) いずれにしても、国連の場で意思決定をするのは「人類」ではない。それぞれの守るべき国益に応じて意思決定をする政府である。

 現在、意思決定は極めて政治的なプロセスにより、道理の範囲内で行われている。唯一の基準となるのは、戦争回避の基本合意を決裂させないよう力のある加盟国、あるいは加盟国のグループの利益を著しく害してはいけないという共通認識だ。(抜粋・引用ここまで)

👉 なるほど確かにこれこそ現在の国連🇺🇳の限界なのだろう。安全保障理事会常任理事国五ヶ国はいうまでもないが、その利害が多くの場合一致せず、基本的に敵対しているテーマが多い。それこそ「国家主権」という概念とその組織が併立する現行地球人類のやむを得ずある真の現実。一つの真実なのだ。とても残念だが…

真実とは残酷で酷いもの。理想とは遠い。だからこの世にはリアリズムが必要。議論においてそれは力を発揮する。言論で勝つのはリアリズムや保守主義なのだ。

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◉ (抜粋・引用再度続く…) これは驚くべきことではない。どこの国の政府も似たようなものだ。わずかな原則と、大きな権力と、そうした権力の抑制の組み合わせによって動いている。(中略)

世界のどの大国にも、国連に主権を渡すことに対して国民の広い支持は得られない。国民の多くは、戦争と国家主権は固く結びついており、戦争をなくすには、主権の多くも手放さなければならないことを認めたがらない。個人の大多数は、自分の国は完全な独立を保つべきだと信じている。

◉ (抜粋・引用) 興味深いことに、この信念は、政府内よりも統治されている国民のあいだにおける方が強い。国連は多くの人々の指示によって設立されたわけではない。進む道に警戒感を抱き、厳しい状況を無視できなくなった国々の政府によって作られた。(中略) 障害となるのは「国民」だ。

われわれは、現代の国民国家をやっつけなければならない。やっつけられる前に。
(ドワイト・マクドナルド 1945年)

◉ (抜粋・引用) 大国の戦争を根絶し、国際法を作るのが100年がかりの計画だとすれば、今はいくらか予定より遅れている。だが、大きく前進はしている。第三次世界大戦は起こっていない。(抜粋・引用ここまで)

👉この書の最後の締めくくりにはこう記されている。

◉ (抜粋・引用) 次の何世代かをかけてわたしたちがやらなければならないのは、独立した国家からなる現在の世界を、真の国際共同体のようなものに変えていくことだ。そうした共同体を作るのに成功すれば、そこがどんなに論争が絶えず、不満が多く、不当行為に満ちていても、戦争という古びた慣例を実質的に排除することができるだろう。そうすれば、ようやく一息つける。( 抜粋しての引用、ここまで )

👉 今まさに現在進行形で起きている、ロシアとウクライナ、次いでパレスチナ(ハマス)とイスラエル、これらの戦争はいつ終わり、誰がどのように反省と総括をするのだろうか。そしてそれは次に継承され生かされるのだろうか。あるいは敵対関係がずっと継続したままの 米韓 対 北朝鮮、中国による海洋進出で実質的に被害を被りつつあるフィリピン、そしてインドとパキスタンの国境紛争、(起きることが懸念される) 中国による台湾への軍事侵攻、など…。

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☝️神道や仏教の心は醜い戦いを抑制する力となりうるか?

 21世紀。その4分の1が過ぎようとする今、世界のあちこちで国家体制の違いに端を発する衝突の危険がいくつか懸念される。安全保障といえば軍事問題だったり地政学のテーマだったものが今や経済安全保障も視野に入ってきた。

国際法による法の支配をしっかり確立し、戦争を防ぐ。信じられる人類の叡智による戦争抑止・戦争回避の仕組み。それは可能か。いや、それはできると信じなければいけない。そういうことではあるまいか。

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