経営学はサイエンスだろうか?
サイエンスとは自然科学・理学。 実験や観測に、または科学的・自然科学的方法に基づく定量的研究…だという定義 (* 後述あり) がある。
経営学に必要な学問的要素は、三つ。経済学、心理学、社会学だという話を雑誌で目にした。法学や文学と異なる組織や企業のマネジメントの科学(Science)*というのは理論的に確立されているのか?、その辺の所、私には確とした掴みどころが分からない。
* 実験や観測に、または科学的・自然科学的方法に基づく定量的研究。
これと併せて考えるに、実企業の経営行動、成功や失敗の "ケーススタディ" という (実験や) ( 終わったこと、あるいは試行したことの結果の) 客観的な "観測" に基づき、経済性、合理性などでの行動科学や人の行動心理学的な側面に学際的に着目して、さらに数値的なデータ、統計などに基づく定量的研究で、何らかの普遍的な法則性を導き出す、というのなら一種のサイエンスと言えるのかもしれない。
科学とは、一定の目的・方法の下でさまざまな事象を研究する認識活動、およびそこからの体系的知識。一般に、哲学・宗教・芸術などとは区別される。現在、狭義または一般の「科学」は自然科学を指す。広義の「科学」は全学術を指すこともある。(出所 : ウィキペディア)
企業経営, Management …それを製品やサービスという『財』の事業活動、つまりビジネスに着目してゴールとして「うまくやる (manageする)」とか「儲ける」、あるいはもう少し大きく出て「市場を創造し経済を回す」を主目的に考えるのなら、確かに哲学・宗教・芸術とかなり異なり、また区別されるだろう。しかし最近バズっている "パーパス" と言ったりすれば、それは哲学とか倫理学にけっこう寄ってくる。またマーケティングなどは一種芸術的要素があると感じており、特に宣伝広告ではありそうだ。
DTC (デロイト・トーマツ・コンサルティング)が発刊した、"Power of Change" 未来を築く経営の新「定石」という一冊を、ゲットしてから随分「詰んでおいた」が、ようやく拾い読みし始めてそんなことを思った。
(閑話休題)
例えば、製造業企業における生産事業(運営)のための資材調達や間接購買とは何か、と考えてみたとき、私の中で、主目的は
- 経済合理性の追求…原価低減、その他
- 生産性の向上…効率的事務作業
がまず念頭に上がる。そしてそのための戦術的なマネジメント手法ではあるが以下、
- 取引優位性の追求…交渉力、調整能力
- 法務…遵法精神に基づく社会行動
- 契約知識…いわゆる取引法務
- 産業知識…(例) 物流
- 心理戦…相手交渉における戦術的対処
- 世界経済、市場、製品、技術、製法、工法、投資などへの幅広い知識
- マーケティング知識と営業戦略
- 短期戦術的競争…価格交渉などが浮かぶ。
ほかにもまだあって、
- 信頼性品質管理の感覚
- 相場感や "読み" などのセンス
- リスク察知と回避能力👉BCPにつながる
- 取引先の経営分析(取引先経営管理)
- 生産を完遂させるための執念と不断の努力
- 生産から出荷とその資材供給の経済分析
などが思い浮かぶ。
もっとも必要で大切なマネジメント能力は、
目標に向かって必要となるものごとや要素をプロデュースする能力、だろう。行動につなげるという意味である。そのために
- サプライチェーンの総合的調整力
- 理論より実践・応用・実績、理屈より行動
などの能力の要素が次々に頭に浮かぶ。
次に担当する購買品目に即して考えてみよう。
✳️ 半導体や記憶装置など、いわゆるグローバルコモディティ(世界商品)を扱うバイヤーであれば、その取引先の産業自体の理解、すなわちその製品領域に特化した『経営学』的な知識と分析、センスが要求される。欧米取引先を相手にするための知識、知恵、能力が必須。
一方で、
✴️ 国内町工場的な小規模下請け取引先からの資材購入では、原価計算とか相手の企業経理、経営数値の把握など、経営者や計理的感覚が必要だ。そして取引先経営幹部と対等に伍して行き、時に経営診断やアドバイスまで出来るレベルが欲しいし、外交能力も大切だ。さらには、
🌟 いわゆる『間接購買』では経費的な費用の契約効率化、コスト削減などがある。
これらを想起した時、セールス活動で "売る" 単一行動のためのサイエンスよりも、資材購買・調達はおそらくより狭くて特化したマネジメントになる。それはあくまでも個人的な経験からの感覚であるが。
より具体的イメージで分かりやすくいえば、
- 担当品種(狭義の) やその業界、取引先分野にかなり近接した感覚にまで入っていき、
- そこに我が身を置いて部材製造の特定テクノロジーや生産方法、物流を含むサプライチェーンの技術的な深い理解まで持って、
- つまり相手の工場オペレーションまで入り込んでのマネジメントを必要とする。
そんなイメージがある。
👉このようになると、バイヤー1個人が担当する購買領域と品種によって必要とされる購買マンの能力は相当違ってくる。(従って同期入社の者たちを比較しても、大きく異なっている。)
◎バイヤーはそれぞれの担当やキャリアパスの違いが大きい。経営学で言うような法則性、言い換えれば『購買学』というものはない。
調達(力) は、幅広くて深いV字型総合力を必要とし、職人技的なマネジメントであると言えるだろう。
知識と能力そしてもっと大切な取引経験を個人レーダーチャートに表わすとしたら、個々人の能力評価と成績は、チャートでさまざまな形になり、一人として同じ購買担当者個人はいないようにも思える。
そこ(生産と調達の現場)では経営学の "サイエンス" よりも、もっと実践的な職人肌の感覚と認知力と行動力 (👉特に変化に対して修正する力に長けているのではないか⁈) がずっと多く、必要になればなるほど力を発揮して、外へ表へ出てくるのだ、と思う。
✴️ どうも冒頭に掲げた主題から展開しているうちに、話が拡がり、まとまらなくなった。一度は書き加えて編集したので今日はここまで (笑).
【編集後記】今日の日中、昼休みは晴れ間がありながらも暑すぎず、気持ちのいいお日柄だった。そこで、昼休みには恒例の『時たま散歩』🚶♂️で麻布台の建設サイト付近まで行ってきた。その様子は、別SNSのInstagramの私のアカウントにあげているのでご覧ください。
翌日は朝通勤時に麻布十番から歩いた。
ところで。
サイエンスや学問は立派だけれど、生産事業の第一線で必須不可欠な資材、部品や材料の供給や納期の「すべった、ころんだ」に対し、素早くrobustになんとかする、修正する能力は、メーカー資材購買マンの腕の見せ所だと思う。