Andyの雑記帳blog (andy-e49er) ⁦‪@Accurasal‬⁩

内外について個人の思いを綴る雑記帳です|andy-e49er | Twitter@Accurasal

日本の電機産業、その凋落

f:id:andy-e49er:20230929201456j:image

「日本の電機産業はなぜ凋落したのか 体験的考察から見えた5つの大罪」(桂幹著、集英社新書から)

  • 身近だったリアルな話題の一冊に目を留めて読み始めた。
  • インサイダーの立場にいた著者の自己経営経験からみた過去の反省の分析の書。
  • そこから得られることはどうしても後ろ向きでネガティヴトーンになる。
  • 読み進めてもスカッとはしない、現実。
  • 正鵠を得ている内容にも遅々として読み進まず。読後感、どんよりとしている。
  • これからの電機・エレクトロニクスはどの方向に向かっていく"べき"か。日本は部品産業による下支えに特化するのか?

👉この知見なり反省を根っこに持ち、半導体や電機の株式へと個人投資の目を向ける時、どうすべきなのか。アウトサイダーとしてどう見ていくべきかなど、読み進めるにつれて悩みは解消せず、むしろ深まっていく。この現実を直視したい。

この後、最終章の『提言』を読むのでまた読後に感想は追加したいと思うがまずはここまで。

(以下はほぼ全てが引用)

世界で圧倒的な強さを誇った日本の電機産業が、なぜ時代とともに力を失っていったのか。その答えを探るのが本書の目的だ。

 第1章で取り上げたのが、デジタル化の本質を見誤った日本の電機メーカーの姿だった。高付加価値、高品質、高性能に逃げ込み、シンプルさや、使い勝手の良さ、買い求めやすさといったユーザにとって大切な要素を軽視した。「画期的な簡易化」と言うデジタル化の本質に背を向けた企業が力を失っていくのは、半ば当然だった。

 第2章では慢心に焦点を当てた。日本の電機メーカーに作っていた技術開発力、生産技術力、ブランド力、営業力などに対する過剰な自負心が、外部環境の変化に対する感度を鈍らせた。様々な製品カテゴリーで韓国や台湾の新興勢力への対応が遅れ、シェアを奪われていったのも必然的な結果だった。

 そして、3番目に取り上げるのが困窮の罪だ。これは、業績の悪化と外部環境の変化が重なる中で日本の電機メーカーが犯した過ちだ。代償は大きく、日本企業は第二段階のデジタル化で主役になる機会を逃すとともに、イノベーションを起こす力を弱めてしまった。業績の悪化は長期化し、技術大国ニッポンの凋落を決定づけた。

第3章(困窮の罪)
第4章(半端の罪)

たとえばこの章ではこんなくだりもある。

ハーバード大学のポール・ボンバー氏とシルパ・コバリ氏の論文によると、ダイバーシティーは明らかに収益に貢献するそうだ。ベンチャーキャピタルを実例に調べたところ、均質なチーム(民族、性別、出身校などが同じ)が行った企業買収や新規株式公開の成功率は、そうではないチームに比べ26%も低かったそうだ。均質な集団は重要な意思決定に際し、多様な検討が難しいことが成功率を低下させる結果になったと分析された。
 実際に好業績に沸くアメリカ企業は、日本企業よりダイバーシティーが進んでいるのは間違いない。女性や外国人の登用の遅れが成長の足かせになっている可能性が高い、と日本の経営者は危機感を持つべきなのだ。

第5章(欠落の罪)
が続いていく。

感想としてはまず、第1章で挙げている「画期的な簡易化」と言うデジタル化の本質、その見誤りで企業経営の針路を間違ったことが大きい。

 第6章(提言) から振り返る。

第一段階のデジタル化を牽引していたはずの日本の電機業界が、いつしかその本質を見誤るようになったのが「誤認の罪」だった。この罪の影響で、高品質、高性能、高付加価値を極めれば競争に勝てると思い込み、より「画期的な簡易化」の提供が疎かになった。( 赤、太字は、blog筆者による )

背景に "慢心" ありと著者は断じ、肝心な本質に目が届かないことなどを指摘。要は対処療法的だったとする。大胆な改革を実行しようとしても中途半端に終わる。リスクを取って明快なビジョンで組織を引っ張る気概なし、の消極的姿勢が「欠落の罪」を招いたなどとする。

 こうして5つの大罪を整理し直すと、一連の罪が相互に関係しあって電機産業の凋落を後押ししていたのがわかる。1つの罪が次の罪を生み、別の罪へつながる。(中略)

 一つの共通した要因に気づく。それは、日本企業における圧倒的な議論不足だ。(中略) 意見の対立を生んだり、当事者の見識が問われたら、組織が目を背けている問題にあえて焦点を当てたりする議論を、無意識のうちに避けてきたのだ。

◉ 一足飛びに結論をまとめてみる。

 "高い同質性がかつては強みだったが、いつしか弱みに変わったこと"、ダイバーシティの不足、社長と同質性ある者に後継を譲る、などがマイナスと評価する。詳細は省くが、提言として私が大きいと評価するのは『指名委員会等設置会社』化を進めるべきと解く点だ。

このほか、いくつか有用と思える提言が連なる。(例) 終身雇用の廃止(メンバーシップ型雇用を辞めジョブ型にする)、インターンシップ、給与の引き上げによる社員のエンゲージメント向上(やる気の出る形)、固定費削減・雇用調整が可能な解雇条件の緩和、雇用の流動化など。それへの補償や対策の案も述べられる。必要な財源は法人税の引き上げとする。

  • いずれもここ数年、日本の大企業では割と取り上げられ、あるいは割と実行に向かっている内容だったりすることが興味深い。

最後にひとこと。

✳️ 一般に言われる大企業 (プライム市場の上場企業) を既に離れた私自身、今では日経新聞ほかメディア報道と、株主としてのIR情報に頼る身となった。現場での経験はもう叶わない。

これからの10年、この書とほぼ同じ等身大の問題意識を我が身に投影して自ら持ったまま、日本企業全体のマクロの動きと社会の変化をしっかりと見て参りたい、と思う。