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企業統治と経営判断・・・HPの場合

 米HP、PC事業を維持・・・記事はWall-Street-Journalのリンクで参照・・・☞ http://jp.wsj.com/Business-Companies/Technology/node_332793/?nid=NLM20111028
 世界のIT業界で「2強」と言ってもよい、IBMとHP。IBMはご存じ、IBMブルーで有名な米国の伝統的価値を体現する東海岸発祥の代表的大企業。そして一方のHPは、シリコンバレー生まれ。ヒューレット氏とパッカード氏による共同創業の会社。ベンチャー起業から成長してきた経緯の会社でIBMとは全く異なる出自である。その系譜は、シリコンバレーを支えるスタンフォード大学や近隣のUCSF、UC Berkleyなど有名大学のハイテク学部の教授や学生、卒業生に支えられるECOシステムの中で成り立つ企業だと言えるだろう。ある意味では、近年台頭してきたGoogleや、最も企業価値が高いと評価されるAppleなどにも「創業の系譜」というか、バレーのベンチャースピリット・DNAが引き継がれているとでも評価して良い、優良企業だ。
 HPは残念ながら近年、経営トップの交代が相次いだ。少し古いところでは、元AT&Tの事業部門でトップ経営陣の中にいたカールトン・フィオリーナ氏であり、その後のEMC出身者(だったかな?)マーク・ハード氏であったが、前者は創業一家取締役との路線対立により。後者は対外取引がらみのスキャンダルが発端となり、HP企業文化や社内ルールに背いた、として取締役会から「解任」されている。
そしてその後、HP取締役会や最高意思決定メンバーでCEOの人選を広く進め、その後を継ぐことになったのが独SAP経営者であった、今回のアポテカー氏だったという経緯がある。
 同氏はその後しかしながら突如意外とも言える決定を下す。・・・世界シェア第一位のパーソナルコンピューター事業から撤退すると判断し正式に発表もしてしまったのだ。・・・理由は期待するレベルでの利益を生んでいないことでPC事業の価値を低く見たことが公表で挙げられていたと記憶する。しかし、少なくとも日本のPCメーカーを大幅に上回る営業利益率を出していたので、私にとっても「??」という印象を受けていた。この発表、PCやIT業界へのインパクトはむろん最大規模のものだったが、おそらく各社とも決定には懐疑的で、その成り行きを静かに注視していたのだと思う。今思えば、やはり撤回かと言う感じである。
 そして・・・。今般アポテカーCEOは解任され、トップが交代した。HP会長は現在、Ray Lane 氏(前のOracle社長経験者にして、シリコンバレーの投資エンジェル的な存在 *実は私はお会いしたことがある)であるが、特に発表はないものの当然、今回のCEO選定から交代の一連人事を主導、決定づけたことは間違いないだろう。
 結論は・・・WSJ記事にある通り、結局はA氏トップダウンでの「PC撤退判断」は拙速であり、経営戦略判断の間違いだった。新たなCEOの下、再度精査検討を加えた結果、撤回することが正解と企業がハイレベルの判断修正をしたということだ。つまりHPは、経営者が正しい事実に基づき、正しいかじ取りの、「正当なそして正統的な判断ができる」ことを内外に示したということだ。一旦下したCEOの決定と発表を覆すという芸当により、正しさを追求し、貫くという、高邁な態度を示したともいえると思う。
 これは企業価値を守り、企業を永続的に発展させるため、内部統制による意思決定(修正)の最たるもの。一旦決めたことであっても企業戦略を正しく是正すること、そのような【アプローチ】アドレススタンスをとれることは素晴らしい。企業戦略を正しく是正することで、
(1)株主・投資家の価値を守り、(2)PC技術とそこから波及する「部品購買力」の維持、そして
(3)ブランド価値(PC事業をスピンオフし、あるいは売却した場合のブランド"競合"の影響度も)、
そして結果的には何よりも、 (4)HPのPC部門従業員に対して「HPウエイ」を維持する道を選択した。

そのような意味において、シリコンバレーベンチャーから発展してきた西海岸的エスタブリッシュメントによる、正統な経営判断ではなかったのだろうか。
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