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『ベルリンに堕ちる闇』原題 : Blackout

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☝️『闇』は悪の象徴であり『日の光』は善

毎回借りて読む "外国小説" は、英独モノ・第二次世界大戦時のヨーロッパを舞台とするエスピオナージもの、スパイもの、サスペンスとミステリーが多い。ナチスが悪として描かれる独英対決のストーリーも何冊か読んでいる。

例えばカズオ・イシグロの小説など、『文学』は全く悪くないしもちろん大好きだが、より興味を惹かれるのは次はどうなるのかハラハラさせてくれるストーリーもの。"読み物" 感覚。

アクションものでミステリーを含み、人間関係が複雑に絡んで、それぞれの主義主張の善悪が、正義と悪とが対峙する "ものがたり" に、より強く親近感を覚えるのはなぜか。

(本のあらすじを書籍から引用)1939年、ベルリン。自らの信条によってナチス・ドイツへの入党を拒否している元レーシングドライバーの警部補ホルスト・シェンケは、元女優である党幹部の妻が殺された事件の捜査を命じられる。どの派閥にも属さない彼は、一歩間違えれば党内の勢力図を変えかねないこの事件を調査するのに適任だった。だが、捜査を進めていくうちに、もう一つの事件が起こり……。第二次世界大戦下のベルリンを描き出した歴史ミステリ。

著者 : Simon Scarrow.  訳者 : 北野寿美枝

『ベルリンに堕ちる闇』 原題 : Blackout

【著者あとがき】抜粋・引用

  • ▶︎私のコメント

歴史小説の作家にとって腕の見せ所は、物語の登場人物が体験する様々な世界観はもちろん、異なる時代と場所を再現しようとする試みである。

  • ▶︎この点はこの本は当時の雰囲気を醸し出す描写になっているものと思いながら読めた。

ヒトラーとナチ党の支配下にあったドイツのような極端な政治体制の場合、詳細を -- 何より時代の空気を -- 正しく知るためには膨大なリサーチが必要だ。

ナチス・ドイツは、党に対して一言でも公然と批判をすれば収容所に送られるか、処刑すらされかねない世界だった。1933年に権力を掌握した後、ナチ党はあっという間に様々な局面で社会を牛耳るようになった。合唱団、養鶏クラブ、ハイキング協会…すべて党内仕組みに組み込まれ、党の宣伝のために利用された。

"ナチズム"の背景にあるものを表すのに"イデオロギー"と言う語は高邁すぎる。ナチズムと言う思想体系には一貫性がなく訴求力もなかった。むしろ、ある幅広い人口構成層に対する嫌悪と偏見をすくいあげる手段であった。

    • ▶︎このサスペンスストーリーでは確かにイデオロギーはなく、単に軍や警察の階級が上かどうか、の強圧的な会話ばかりが描かれるから、イデオロギーは関係ないかに思えた。

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(中略)その結果、政権は派閥に分裂し、反目しあっていた。リーダーとの関係は、リーダーの機嫌を取るべく命じられる前に命令に従うと言う原則に基づくものだった。

ドイツ人の性格の特徴だと思われている効率性を好むと言う一面にかこつけて、ナチス政権下では少なくとも列車の遅延はなかったなどともっともらしいことがよく言われる。

だが実際は、ナチス・ドイツは十分にオイルをさした機械のような体制ではなく、ありとあらゆる腐敗と脅迫によりバラバラに分断されてきしみを上げる泥棒政治体制だった。

  • ▶︎この言い回し『泥棒政治体制』の言語はなんだろうか? ともあれ、政治を「盗んで」ナチス(党)が全ての上位に君臨して存在し、政府機関や警察機構をも抑えて理屈抜きに物事の善悪を独善的に決めつける物語のシチュエーションや(会話による)行動描写。それらは…共産党が上位に位置して全てを指導する今の中国社会を想起させる。
  • ▶︎主人公は党に服せず距離をおく人物・人格として終始描かれる。警察官(法執行官)としての法の支配と法執行による正義の追求を重んじている。そうして党のご都合主義的?命令による"政治解決"に違和感を保ち続ける生理的拒否反応を保つ人格の人物である。そこにこの著者の主張としての『良識』を感じとれる。