料理の「レシピ公開」は吉と出るか?
新型コロナウィルスの影響からレストランが休業を余儀なくされた時に、
人々が多く使った宅配と並んで、多くの店が取り組んだことは、
なんと自らのレシピを公開することだった。
これは欧州のシェフから始まった流れ。
2020年4月ごろ日本にも波及した。
プロの料理人が、そのレシピを公開することは、
「秘中の秘」を外に出してしまうことだ。
マイナスの面ばかりで、損を被るのではないだろうか?
しかし、どうも違っているようだ。
実際にレシピを公開したプロの人は言う。
「躊躇する気持ちも理解しますが、
今回はメリットばかりだと僕は思っています」
(カレー研究家、出張料理人の水野仁輔氏)
◎なぜ公開はメリットばかりなのだろうか?
(1) プロのレシピを見て料理を作ることで一般人も他店のシェフも、
みんなのレベルが1段上がる
(2) なかでも1番レベルが上がるのは公開した本人
なぜか。
👉レシピを試した人による感想が次々に、ネットに投稿される。
👉これらの様々な反応、SNSに投稿された声などから、
1番多く吸収できるのはレシピを熟知する本人なのだ。
レシピ公開のメリットは他にもある。
公開した本人自身の名も売れて評判が高まる。
レシピを試した人は次は本当のお店で食べてみたい、となるのだ。
たとえレシピを公開したとしても実際に作るときの環境、つまり食材の状態や鍋の種類。
水、食材の調理の仕方(例えば蒸気の具合)などプロの料理人がその五感で料理する事は、
普通の素人が行う料理とは微妙に異なってくる。
公開された目に見える知財だけでは無い、ニュアンスやプラクティスの微妙な差は必ず残る。
ある意味、それが「ノウハウ」だと言えるのかもしれない。
💮考えてみればこれは
ソフトウェアのオープンソース手法と似てはいないだろうか。
コンピュータープログラムを公開することで、
様々な力量の人がコミュニティーに参加し、
プログラムをどんどん改善改良していく。
公開されたプログラムは著作権の対象から外れる。
トレードシークレットでもなくなる。
自由に改善改良が施されていく。
そしてその改善改良はとどまるところを知らない。
気がつけば
より良いものがいろいろな人の手で、作り上げられている
ことになる。
👉この考え方を応用すれば、いろいろな分野で、
オープンイノベーションによる制約のない自由な協業、
コラボレーションは、性善説に立つより良いものづくりの新たな手法として、
今後主流になるのではないだろうか。
(この記事は2020年7月19日日本経済新聞日曜版 NIKKEI The STYLE 記事を1部分引用の上で、編集を加え記述しました。後半は私のオリジナル著述です。)