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『交渉術』(佐藤 優)

文春文庫 2011-06-10/著者(佐藤 優)氏は、1960年生まれ、浦和高校入学、同年夏に一人で東欧・ソ連を旅する(これは知らなかった・・・)79年同志社大学神学部入学、85年大学院神学研究科終了後、外務省入省。
 ◇外交官としては、在英日本国大使館(この頃、英国陸軍学校でロシア語を学ぶ)、在ロシア連邦日本国大使館に勤務。その後、95年より外務省国際情報局分析第一課で主任分析官として活躍。
 ◇2002年5月、背任と偽計業務妨害容疑で逮捕され、512日間東京拘置所に拘留された。09年6月、最高裁によって上告が棄却された。本書は連載時に文藝春秋読者賞を受賞。
 ◇前半の1〜2割は交渉に関する真面目な研究が記述されている。そのあとは主に、ソ連/ロシアの政治活動、鈴木宗男氏と活動してきた北方領土問題、日本の歴代首相との対ソ外交、北方領土返還に向けた政治・外交活動の実話(外交の裏話とでも言えるシロモノ)となっている。随所にソ連要人(ゴルバチョフ、エリツイン、プーチンほか本書で初めて名前に触れるような先方の要人)が登場。歴代首相も、橋本龍太郎、小渕、森と各時代の政権中枢に筆者は専門官として関わっている。(それらが行きつくところは…「やりすぎ」とされてご承知の通り東京試験特捜部から起訴され逮捕となるのだが・・・)
 ◇現実の「インテリジェンス」(スパイ小説とは異なる。外交の第一線で表向きだけではない裏街道の極め付きの異色な活動も登場して詳らかにされる。しかしそれらは謀略と言った類のものではないので、安心して読める)
 ◇著者本人が語っていることであるが、彼は外交官として志したのは、
(1)歯舞、色丹、国後、択捉の北方4島を日本に取り戻すこと、
(2)日本外務省に国際水準の対外インテリジェンス機関をつくること、の二つだった。
残念ながらこれらは成し遂げることができなかった。その反省と著者の失敗の経験を本書に余すことなく表すことで、後世に(外務省の後輩たちに)語り継ぎたいという明確な意思がある。 
 ◇感想をまとめる。経験してきた話の厚みが半端ではない。政権の中枢、国家の外交の闘いの真正面に位置する。だから真に読みごたえがある一冊だ。実は、私は順番通りではなく、興味を持てる章からパラパラ拾い読みしているうちに、結局は重厚で面白いので全てを一気に読んでしまった。それだけ凝縮された国家に対する深く知られざる活動が真に迫って描き出されている。「秀逸作品」だと思う。

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